だいぶ前に読んだけど、内容をほとんど忘れたので、再読してみた。
佐藤君がひきこもりで、エロゲー製作に情熱を燃やして、妄想して…、一般の人が読んだら間違いなく引いてしまうだろう展開のオンパレード。でも、佐藤君と精神状態が同類な俺としては、どうしても、共感してしまうし、エロゲー製作に邁進するところとかは、「青春だなー」なんて、羨ましくさえ思える。
この作品、ただのひきこもり小説ではない。読んでいると、考えさせられることが多いのだ。
例えば、NHK。自分たちが叶えられない夢や希望や、自分たちのつまらない現状によるやるせなさやどうしようもなさ、何をしてもうまくいかない自分のふがいなさ、…様々なものをぶつけるためのはけ口の名称だ。明確なる悪というものが、本当に存在してくれたら、俺にとって、どんなに良かっただろうか。それさえあれば、身の回りに起こるどうしようもないことが、全てそいつのせいにできるのに。なんて、色々考えてしまう。
自分が高校生の頃を思い出してみる。何かをする際に、きっかけが欲しかったあの頃。「地震が起きて、自分の住んでいる街が潰れてしまったら、皆を救助するために頑張れるのに…」なんていう不謹慎な考えを持っていたこともある。それは、この本でいうところのNHKではなかったか。地震という悪に対して、全力で立ち向かいたいという思いだったのではないか。
しかし、現実では、明確なる悪など、ほとんどない。それは、誰かが作中で言っていた「悪い人なんていないのに、どうして悪い方向に…」という言葉に現れている。色々な力が働き動くのが、社会システムというものだ。だから、悪い方向に行った原因なんて分からない。それでも、悪い奴が本当にいるのだとしたら、自分のあっている不幸が本当の陰謀なのだとしたら…。そんな風に悩んでしまった時は、この本を読むのがいい。佐藤君が全力で戦う姿に、共感を覚えるはず。
つーか、俺もエロゲーとか作ってみてえ。まず、一緒に作る仲間がいないけど。